病診連携についての私の考え

病診連携についての私の考え 2000年4月10日

 

 他院への紹介に関して 今日では患者さんが単一疾患である方がむしろまれであり、また高齢化に伴いどうしても癌の発生を避けて通れません。したがって、単一診療科のみで長期管理を行ったり、基本的な検査をせずに患者さんを診療しつづけることは、きわめてリスクがある医療となります。このような考えで当院では積極的に他院への紹介を行っております。 

 昨年1年間で、当院から他院への紹介件数は総数220~240件でした。紹介目的ごとの分類では、胃内視鏡・大腸ファイバー・CT・MRI・心臓カテーテル検査等の検査依頼が114件、皮膚科・眼科・内科・外科等への精査依頼が36件、内科を中心に入院依頼が33件、施設への入所依頼が8件等でした。 

 紹介先の内訳では、検査依頼・入院依頼を中心に千葉西へ175件(79%)、他の病院へ19件(9%)、近隣医院へ8件(4%)等でした。千葉西以外への紹介の絶対数は確かに少ないですが、各疾患の種類や特徴により紹介先を選択しています。 

 紹介先に関しては「患者さんが良質な医療を受けてもらえばよい」という、基本的なスタンスでいます。言いかえれば、患者さんに当該疾患に最善の医療を紹介するという立場で、これは勤務医時代には行おうとしても行えなかったことであり、患者さんにとって大きな利点と考えています。 

 紹介先の病院や担当の先生が、患者さん本位の医療をしっかり行っていることが確認されなければ患者さんを紹介できませんので、私もなるべく高くアンテナを張り巡らし、「よい医療」や「よい医者」を見つけるよう、努力しています。

 

 病院の診療内容の情報公開が求められる 

 

 この1年間の経験から、各病院にその診療内容の情報公開を求めたいという考えに至っています。現状では専門職の開業医にもその診療内容は十分に公開されていません。いわゆる病院のランク付けの基準は第一に治療成績であると考えますが、巷間に出回っている出版物は疑問符がつくものばかりです。そういうものに頼らざるを得ない現状は患者さんの不幸ともいえます。まず、専門職である開業医を納得させる事実に基づく治療成績を提示すべきであると考えます。 

 例えば、胃癌の診断や治療・手術成績に関して言えば、胃内視鏡の実施数、早期胃癌の発見率、合併症の率、胃癌分類ごとの治療成績・5年生存率等です。 

 各専門分野ごとの代表的疾患の医療レベルを示す治療成績が存在するものです。それらの当該病院自身の数値を事実に基づき(誇大宣伝なしに)毎年報告して頂きたいものです。本当の「インフォームド・コンセント」とは、患者さんや家族の方にその成績を数字で示し、その上で治療を治療を選択するものですが、現状は異なる「説得」という形が多く、本来の形を呈していません。 

 今後はこれらの治療成績の一覧表が各年度毎に近隣開業医に配布され、その評価も含めた総合的判断で各医師が患者さんを紹介するという、情報公開の流れが必要と考えます。これらを基とした病院間の競争は、地域の医療レベルを引き上げる具体的な原動力ともなります。
 

検査機器と入院ベッドの開放を求める 

 

 各病院には検査設備および入院ベッドの開放(オープン・ベッド方式の採用)を推進していただきたい。CT・MRI・胃内視鏡・大腸検査・心カテ等、血管造影検査や入院ベッドは、本来一医療機関の独占物としてあるのではなく、地域住民の共用たるべき性格があるはずです。あちらにもこちらにも多少の優劣を競いながらも結局は、同等の医療機関を設置する事は明らかに医療経済的に無駄な投資です。ひいては患者さんに過剰な検査を強いて、医療費増大の原因を形成している現状があります。現在当院では、専ら千葉西総合病院の検査体制を利用していますが、皆さんの住居の近くにある他の病院の検査も利用できてしかるべきと考えます。 

 入院ベッドについても基本的な視点は前記と同様です。患者さんは病気の種類によってはいつかは倒れる局面も迎えます。当方も鋭意努力しておりますが、現状では入院となった状態を診てさしあげられない心苦しさがあります。患者さんの病気上の特徴もこちらの方が十分に承知していますし、未だ当方には入院患者さんを訪問する気力や体力もあります。 

 オープン・ベッドとは入院患者さんを病院の勤務医と、それまで診てきた開業医が共同で診察にあたるシステムの事で、全国の各所で行われておりますが、まだ部分的な試みです。近隣では「船橋医療センター」で行われております。白衣を着て患者さんを病院で診察することは、患者さんにとって精神的な支えのみならず、患者さんの実益につながることであると確信しています。 

 考えてみれば、46万都市の松戸で全くオープン・ベッドがない現状こそ奇異なことで、市民の不幸といっても過言ではありません。もし私の近隣の病院でオープン・ベッドを提供してくださり、かつ主治医の先生が協調的で熱心な先生であれば、喜んで紹介し、活用させて頂きたいと考えています。

 

 やむをえず緊急入院や夜間の受診をされたとき 

 

 当方も日頃万全の病態管理を心掛けますが、皆さんの病態が悪化し他の病院などに緊急の受診や入院をされることもありえます。その際は 

 1)調剤薬局が出す薬の説明書きを必ず持参して、担当の先生に「どうたれ内科からこの薬をもらっている」と告げて下さい。私が夜間当直や救急医療を行った経験からは、この薬の情報があれば患者さんの診断と治療に大変役立つのです。普段からその「説明書き」を財布や運転免許証などにはさんでおき、急変時はあわてないで担当医師に見せてください。 

 2)また入院となった場合は担当医師に当院へFAX(FAX番号047-394-0610)などで連絡するよう告げてください。当院が皆さんをこれまで診てきた経過を入院先の主治医の先生に報告しますし、治療に役立つ情報をお知らせしますので、必ず「どうたれ先生に知らせてください。」とお告げ願います。もちろん当院は24時間体制で皆さんを管理し得ませんが(在宅医療を受けておられる患者さんには対応しています。)、できるかぎり遅滞なく対応させていただきます。(なお私は勤務日には朝7時半頃には診療所に出勤しております。) 以上、みなさんや地域の病院や他の診療所と協力し、合理的で最善の医療を行っていきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。